内野手の送球イップスを克服するための考え方と練習法
こんにちは。Baseball Growth LabのSAKURAです。高校野球・大学野球を通じて内野手を専門にプレーし、甲子園出場も経験しました。現在はその経験を活かして、型付け済みグローブの仕入れ・販売にも携わっています。
今回は少し踏み込んだテーマとして「送球イップス」について書きます。実は私自身、中学時代に送球イップスを経験し、高校まで長く付き合ってきました。ネットで検索すると克服法や練習法はたくさん出てきますが、実際に経験した人間の視点で正直に書かれたものは意外と少ないと感じています。こんな悩みを抱えている選手・保護者・指導者は多いのではないでしょうか。
- 特定の距離・場面になると急に送球が不安になる
- キャッチボールでは普通に投げられるのに、実戦になると投げ方が分からなくなる
- 一度暴投してから、同じような場面で体が固まってしまう
- チームメイトや我が子がイップスかもしれないが、どう声をかければいいか分からない
普通のキャッチボールは平気なのに、試合になると急に投げ方が分からなくなるんです…自分がおかしいんじゃないかって不安になります
おかしくなんてないですよ。私も中学から高校まで、まさに同じ症状に苦しみました。今日は経験者として、当時の状況と、どう向き合ってきたかを正直にお伝えしますね。
送球イップスは、数をこなすだけでは克服できません。焦らず特定の練習に絞って少しずつ改善していくこと、そして「考えすぎない」ことを意識しながら、完全に治すというより上手く付き合っていく姿勢が大切だと、経験者として感じています。
この記事の内容
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| ①送球イップスが起こりやすい状況 | 実戦的な送球でだけ症状が出る特徴 |
| ②私が送球イップスになった経緯 | 中学時代、三塁での深い打球処理がきっかけ |
| ③少しずつ改善するための練習法 | ワンバウンド送球など特定の練習に絞る |
| ④イップスとどう付き合っていくか | 完全な克服より、チームでの支え合いを大切にする |
こんな人におすすめ
- ✅ 特定の場面になると送球に不安を感じてしまう内野手
- ✅ 数をこなす練習だけでは克服できないと感じている人
- ✅ チームメイトや我が子のイップスにどう向き合えばいいか悩んでいる人
- ✅ 送球イップスの経験者の実体験を知りたい人
- ✅ 完璧な克服より、上手く付き合っていく方法を探している人
①送球イップスが起こりやすい状況を整理する
送球イップスの厄介なところは、症状が出る場面が非常に限定的だということです。私自身の経験でも、友達との普通のキャッチボールや、緊張感のない練習中の送球ではまったく症状が出ませんでした。ところが、試合や実戦形式のノックのような「結果が求められる場面」でだけ、急に投げ方が分からなくなるという現象が起こりました。この「普段は平気なのに、特定の場面だけダメになる」という特徴を知っておくことが、まず最初の一歩だと思っています。
この特徴を知らないと、「自分は投げ方自体を忘れてしまったんじゃないか」「フォームが根本的に崩れているんじゃないか」と、必要以上に自分を追い込んでしまいがちです。実際には、体の動かし方そのものよりも、失敗した経験と場面が結びついてしまうことで起こる現象だと私は理解しています。だからこそ、フォームを一から作り直すような対処よりも、場面と体の反応を少しずつ切り離していく練習のほうが合っていると感じました。
私の周りには、私だけでなく送球イップスに悩む友達・チームメイトも何人もいました。一緒にプレーしてきた中で分かったのは、イップスの出方は選手によって微妙に違うということです。距離が近いほど投げにくくなる選手もいれば、私のように特定の打球の処理場面だけ症状が出る選手もいます。「イップス」とひとくくりにせず、自分がどの場面で症状が出るのかを丁寧に把握することが、対処法を考えるうえで欠かせないと感じています。
また、送球イップスはメンタルの弱さだけが原因だと誤解されがちですが、私はそうとは言い切れないと考えています。深い打球を追いついて体勢を崩したまま強い送球をする、という動作自体が、そもそも体への負担が大きく難易度の高いプレーです。難しい動作の中で一度失敗した経験が、脳と体の反応として強く結びついてしまう。それだけの話であって、「気持ちが弱いから」とか「練習不足だから」という単純な原因ではないと理解しておくことが、本人にとっても、周りで見ている指導者・保護者にとっても大切だと思っています。
②私が送球イップスになった経緯
私の場合、きっかけは中学時代、三塁を守っていたときのことでした。深めの打球を追いついて捕った際に暴投してしまい、そこから「どう投げればいいのか分からなくなる」という感覚が続くようになりました。三塁からの送球は、体勢を立て直す時間が少ないまま強い送球をしなければならない場面が多く、まさにその難しい状況が私にとってのきっかけになったのだと思います。
一度の暴投がきっかけとはいえ、症状はその場限りでは終わりませんでした。同じような、深い位置で体勢を崩されるタイプの打球が来るたびに、頭の中で「またあの時のようになるかもしれない」という不安が先に立ってしまい、それが高校に上がるまでずっと続きました。中学から高校に上がる際の打球速度・グローブの耐久性の変化については以前の記事でも触れましたが、送球イップスのような心理的な課題は、レベルが上がってもそのまま持ち越されてしまうものだと実感しています。
今振り返って感じるのは、あの時「なぜ自分だけこんな症状が出るんだろう」と一人で抱え込んでしまったことが、余計に症状を長引かせた一因だったのではないかということです。当時は「イップス」という言葉自体、今よりも周りに知られていなかったこともあり、誰にどう相談すればいいのか分からず、ひたすら一人で練習して数をこなそうとしていました。ですが、この「数をこなすだけ」というアプローチが、実はあまり効果的ではなかったと今は思っています。
③少しずつ改善するための練習法
私が実際に効果を感じたのは、通常の送球練習ではなく、ワンバウンド送球など特定の練習に絞って取り組むという方法でした。全力で正確に投げようとするプレッシャーのある通常送球ではなく、あえてワンバウンドで送るところから始めることで、「投げること」自体への抵抗感を少しずつ減らしていくイメージです。これを繰り返す中で、完全に治ったとは言えませんが、少しずつ工夫しながら送球につなげていけるようになっていきました。
ここで一番伝えたいのは、ただ数をこなすだけではうまくいかないということです。不安を抱えたまま闇雲に送球練習の本数を増やしても、失敗の経験が積み重なるだけで、むしろ症状が悪化してしまうこともあります。大事なのは、成功しやすい形(距離を近くする、ワンバウンドにする、負荷を下げるなど)から始めて、「投げられた」という感覚を積み重ねていくことです。内野手の送球そのものを強化するトレーニングについては、こちらの記事でも詳しく解説しているので、基礎から見直したい方は参考にしてみてください。
もう一つ、私が大切にしてきたのが「考えすぎない」という意識です。これは言葉にするのは簡単ですが、実際に体を動かす場面で実践するのはとても難しいことでした。それでも、投げる前に頭の中で色々な失敗のイメージを巡らせるのをやめ、目の前の一球だけに意識を向けるようにすることで、少しずつ体が自然に動くようになっていった感覚があります。難しいことは分かっていますが、この「考えすぎない」という視点を持っておくことは、送球イップスと向き合ううえで欠かせないと感じています。
④イップスとどう付き合っていくか
正直なところ、これまで多くの送球イップスを経験した友達・チームメイトと一緒にプレーしてきましたが、経験上、完全に元の状態に戻すというのは簡単ではないと感じています。だからこそ、「治す」ことだけを目標にするのではなく、症状とどう付き合っていくか、どう工夫して送球につなげていくかという視点を持つことが大切だと思うようになりました。
この視点を持てるようになったのは、チームメイトとの関わりがあったからです。同じようにイップスに悩む選手同士で「今どんな感覚?」「どの場面がしんどい?」と話し合ったり、送球以外の役割で助け合ったりすることで、一人で抱え込まずに野球を続けられました。私はこれこそが野球というチームスポーツの良さだと思っています。イップスという課題を個人の問題として抱え込ませず、チームでどう向き合っていくかを共有できる環境こそが、結果的に一番の支えになると感じています。
指導者や保護者の方に伝えたいのは、イップスに悩む選手に対して「もっと投げ込め」と数をこなさせるだけの指導は、逆効果になる可能性があるということです。まずは症状が出る場面・出ない場面を選手本人と一緒に整理し、成功体験を積みやすい形から少しずつ実戦の距離感に近づけていくこと。そして何より、一人で抱え込ませず、チームとして受け止める雰囲気を作ることが、遠回りに見えても一番確実な向き合い方だと、自分の経験から強く感じています。
私が高校時代、ありがたかったのは、周りの選手が私のイップスをことさら特別扱いせず、それでいて無理に「気にしすぎるな」と突き放すこともしなかったことです。ノックの順番を気にかけてくれたり、失敗しても普通に次の球にいけるような空気を作ってくれたり、そうした日々の小さな積み重ねが、結果的に一番のリハビリになっていたのだと今は思います。イップスは個人の課題であると同時に、チームの雰囲気次第で悪化することもあれば、少しずつ和らいでいくこともある、そういう性質のものだと感じています。
まとめ
- 送球イップスは実戦的な場面でだけ症状が出やすいという特徴がある
- 数をこなすだけでは克服できず、成功しやすい形から少しずつ積み上げる練習が有効
- 「考えすぎない」という意識も、症状と向き合ううえで大切な要素
- 完全な克服より、症状と付き合いながら工夫していく視点とチームでの支え合いが重要
送球イップスは、経験したことのない人にはなかなか理解してもらえない悩みです。私自身、中学から高校まで長く付き合ってきましたが、一人で抱え込まず、チームメイトと状況を共有しながら向き合ってきたことが、野球を続けるうえで大きな支えになりました。今悩んでいる選手も、指導者・保護者の方も、この記事が向き合い方を考えるきっかけになれば嬉しいです。
イップスは決して珍しい悩みではありません。周りにも同じ悩みを抱える選手が必ずいるはずです。一人で解決しようと焦らず、チームという環境をうまく活用しながら、自分に合った向き合い方を見つけていってもらえたらと思います。
よくある質問
Q. 送球イップスは完全に治るものですか?
A. 私自身の経験や周りの選手を見てきた限りでは、完全に元の状態に戻すのは簡単ではないと感じています。ただ、症状との付き合い方を工夫しながら、実戦で送球できるレベルまで改善していくことは十分可能です。
Q. 送球練習の本数を増やせば克服できますか?
A. ただ数をこなすだけでは、失敗の経験が積み重なり逆効果になることもあります。ワンバウンド送球など成功しやすい形から始め、少しずつ距離感を実戦に近づけていく練習法がおすすめです。
Q. チームメイトがイップスかもしれないとき、どう声をかければいいですか?
A. 「もっと投げ込め」と本数を求めるより、どの場面がしんどいのかを一緒に整理してあげることが大切です。一人で抱え込ませず、チームとして受け止める姿勢が本人の助けになります。
Q. 保護者として何かできることはありますか?
A. 結果を焦らせず、普段のキャッチボールでは症状が出ないことも多いという特徴を理解してあげることが大切です。本人が一人で抱え込まないよう、話を聞く姿勢を持ってあげてください。
Q. イップスになりやすいポジション・場面はありますか?
A. 私の実感としては、体勢を崩したまま強い送球をする必要がある場面ほど症状が出やすい傾向があると感じています。三塁からの送球や、深い位置での逆シングル処理後の送球などは、その代表的な例だと思います。
あわせて読みたい
- 内野手の声かけ・連携術|お見合いを防ぐコツ

- 荒れたグラウンド・雨上がりのイレギュラー対応術|甲子園経験者が教える備え方

- 内野手のグラブトス(トスプレー)のコツ

- 一塁手の捕球・ベースワーク基礎

- 内野手の送球イップスを克服するための考え方と練習法




ZETT プロステイタス
ローリングス
ザナックス トラストシリーズ